2週続けての台風でした。特に先週の台風21号による被害はひどかったので、台風関連の相談が増えています。

台風による暴風で家の瓦等が吹き飛ばされて近隣に被害を生じさせると、民法の定める工作物責任が問題となります。工作物責任は免れることの難しい非常に重たい責任です。ですので、台風の暴風にも耐えられるように日頃から建物等を維持管理することが肝要なのです。

ところで、工作物は建物に限られません。塀や電柱、煙突など人が土地に接して作ったものであれば、大半が工作物になります。

今年の7月、私は丁寧に美しく築かれた石塀と出会っています。現存する世界最古(江戸時代前期!!)の庶民のための公立学校、閑谷学校(岡山県備前市)を訪れた際に魅了されたのです。かまぼこ型に隙間なく石積みされた塀の間を歩きながら、「高度な技量を持った職人さんがたくさんおられたのだろうな。」と私は考えていました。

台風21号により、私の知っている古民家の土壁の塀が崩落しました。幸いにして人身への被害はなかったものの、土壁の再築が課題となっています。実はこの家の塀には土壁部分と、後に構築されたコンクリートブロック造の箇所があります。コンクリートブロック造の塀は台風による被害を全く受けませんでした。

家主は当初、土壁の再築を希望されていました。しかし、土壁の再築に要する費用と今後のメンテナンス、再度崩落して人身に被害を生じさせた場合の法的リスク(工作物責任!)を考えると、土壁の再築には躊躇してしまいます。

古き良き町並みの保全は容易ではありません。職人の数も減っています。私が閑谷学校で魅了されたような美しき工作物は、将来も維持されるのだろうかと少し心配になった週末でした。

(丹波市 弁護士 馬場民生)