先週土曜日は熊本出張でした。熊本学園大学で開催された社会法研究会に参加するためです。大学構内には黄色く紅葉したイチョウの木が植わっていました。南国のためか、私(弁護士馬場)の母校(北海道大学)のイチョウよりも、木が大きいように感じました。
研究会では、私が奨学金問題について報告したほか、ドイツの人事制度と残業代をめぐる最高裁判例が報告されていました。
残業代の最高裁判例(平成29年7月7日判決)は実務への影響が大きいと思いました。事案は次のとおりです。
年俸1700万円で医療法人に雇用されていた医師が原告です。医師は残業代(割増賃金)が支払われていないとして訴えを提起しました。これに対し、医療法人は、残業代は年俸に含むことで合意していたと反論したのです。
最高裁は、定額の給与を定める際に「通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができることが必要」と述べて、年俸に残業代が含まれているとはいえないと判断しました。残業代を給与に含めて支払う場合には、給与のうちどの部分が残業代分なのかがわかるようにしなければなりません。年俸が1700万円と高額であったとしても、残業代を支払ったことにはならないというのです。
残業代込の給与にはご注意です。訴訟リスクを避けるためにも定額の給与に残業代を含めるような定めは止めた方が無難です。
(丹波市 弁護士 馬場民生)