今年度(平成30年度)に入り、丹波市・篠山市(兵庫県)の司法制度が大きく変わりました。お隣の京都府福知山市の検察官が柏原の裁判所で公判を担当するようになったのです。「お隣の京都府」がポイントです。
司法制度において県境は超えることのできない壁です。弁護士会は県ごとに分かれています。裁判所は本庁と呼ばれる裁判所が各県の県庁所在地にあり、それ以外の裁判所には「○○支部」との呼称が付きます。丹波市・篠山市であれば神戸地方裁判所柏原支部となります。
遺言書の作成でお世話になる公証役場の公証人は、県外へ出張することができません。丹波市(兵庫県)在住で外出が困難な高齢者が公正証書遺言を作成する際に、お隣の福知山市(京都府)の公証人は丹波市内の自宅や病院、施設まで出張できないのです。仕方がありませんので、兵庫県内の伊丹市あるいは豊岡市にある公証役場に出張をお願いすることになります。
兵庫県北部には労働審判を開廷できる裁判所がありません。京都府北部も同様です。そこで、「福知山市の裁判所に兵庫と京都の北部を管轄する労働審判を開廷すればよいのでは?」と私は司法アクセスの改善に尽力されている弁護士に提案したことがあります。その弁護士は「絶対に無理。裁判所は絶対に県境を超えない。裁判所はそういうところ。」と言って、私の提案を即時に却下されました。
ところが、検察は違いました。今年度、検察は京都府と兵庫県の県境を超えました。現在、福知山市に常駐している検察官が、柏原の裁判所に出頭されています。
地域の利用者目線で考えれば、県境を理由に司法サービスの提供を拒否すべきではありません。既存の枠組みにとらわれない柔軟な発想が、司法制度にも求められています。
(丹波市 弁護士 馬場民生)