(上)の続きです。
財産分与の具体的内容について調整がつかず、離婚調停が長期化することがあります。この時は裁判官の意見を求めてください。裁判官が判断するとしたらどのような結果になりそうかを明らかにしてもらうのです。
裁判官は忙しいです。事件の数と比べて裁判官の数が少な過ぎるのです。ですので、裁判官の意見を求めると嫌な顔をされます。でも、これは裁判所の都合に過ぎません。裁判官の意見が出ると調停が成立に向かって一気に進みます。
財産分与が原因で調停が不成立となり、訴訟に移行したところ、裁判官主導で早期和解が成立することがあります。調停の段階で裁判官が積極的に意見を出していれば、本来は訴訟移行の必要性がなかったのです。
金銭関係では慰謝料も問題となります。不貞行為の有無が争点となることが少なくありません。弁護士によっては不貞行為の有無についての証拠を出し惜しみすることがあります。訴訟移行になったときに有利に展開したいということのようです。しかし、これは弁護士にとっての利点であって、当事者にとっての利益にはなりません。調停の段階ですべての証拠を出して、不貞行為の有無を確認すれば早期に紛争は解決するのです。証拠を出し惜しみして調停を長期化させて、相手を根負けさせようと考える弁護士もいるのかもしれませんが、紛争を長期化させることを厭わない姿勢は私には理解できません。
無駄な争いもすべきではありません。自己の立場を有利にするために、取得できないとわかっている親権を主張する方がいます。紛争を激化させることは子どもの利益になりません。子どもを犠牲にして調停を長期化させることは止めるべきです。
面会交流についても同じです。相手方の暴行や連れ去りの危険、不適切な言動など特段の事情があれば別ですが、特段の事情がなければ面会交流には応じるしかありません。面会交流に拒否的になる心情はわかります。しかし、面会交流に過剰なまでに前向きな裁判実務を前提すると、調停を長引かせないためには(特段の事情がない限り)面会交流には応じるべきということになります。
(面会交流の可否についてはこのブログをご参照ください。)
親権や面会交流といった子どもの利益にかかわる争点については、できるだけ早く調査官調査をしてもらうべきです。調査官調査だけでも数か月を要します。裁判官の指示が必要だからなどといってもったいぶる調停員・調査官がいますが気にしないでください。裁判官は調停員からの報告をもとに調査官調査の必要性を判断します。ですので、調停員がその気になれば調査官調査は始まるのです。調査官調査の結果が出れば(少なくとも調査対象については)調停は終わったも同然です。
(子の連れ去りと面会交流、親権についてはこのブログをご参照ください。)
ブログ「長い長い離婚調停を早く終わらせるには」は、ひとまずここで終わりとします。また機会があれば追記したいと考えています。ここまで書いて改めて思うのは裁判官が足りないということです。裁判官が足りないから離婚調停は長期化し、経済的に弱い者に妥協を強いり、あるいは紛争を激化させ、子どもの利益を損なうのです。
(丹波市 弁護士 馬場民生)