裁判所の支部問題を御存知でしょうか。地方にある裁判所(支部)の体制が不十分で利用しにくいため、弁護士会が裁判所支部の人員等の充実を求めているのです。
2月20日に大阪弁護士会館で「近畿弁護士会連合会管内の支部交流会」が開催されます。私(馬場)は、パネリストとして、神戸地方裁判所柏原支部の執務の現状を話さなければなりません。本来であれば、支部問題に熱心に取り組んでこられた別の先生方が適任なのですが、先生方が所用があるということで、私にお役目がまわってきたのです。
丹波市にある柏原支部は丹波市、篠山市を管轄しています。開廷日(裁判のある日)は、簡易裁判所(簡裁、140万円以下の簡易な事件)が月曜と火曜、地方裁判所と家庭裁判所(地裁と家裁。簡裁に属さない事件すべて)が木曜と金曜となっています。篠山市には簡易裁判所のみがあり、水曜と木曜が開廷日です。
柏原支部ではほとんどの事件を取り扱っています。ただし、労働審判と裁判員裁判、少年事件、不動産と動産の強制執行は別の裁判所が担当することになっています。
裁判官の執務体制ですが、簡裁は一人の裁判官が柏原支部と篠山の簡易裁判所を兼任しています。地裁と家裁も裁判官は一人しかおらず、尼崎の裁判所との兼任です。
地裁と家裁の開廷日は週2回(木金)ですが、その他に月2回、水曜日に裁判官が尼崎から柏原支部まで出張してきます。裁判のない日であっても、裁判官には様々な仕事がありますので、裁判所にいてもらえることには意味があります。
たった一人の裁判官が地裁と家裁のすべての事件を担当するというのは本当に大変だと思います。しかも、代わりの裁判官がいないために、一人の裁判官がいくつもの裁判や調停の立ち合いをしなければならず、裁判が途中で中断したり、長時間にわたって待たされることもあります。
また、裁判官が裁判所に来る日が限定されるため、裁判官が決済できる日が限られます。そのため、差押えや謄写許可、審判等の裁判所の決定が遅れることもあります。急ぎの事件のときには裁判官が足りないと実感させられるものです。
ですので、裁判所を利用する側からは、裁判官には裁判所に常駐して欲しいというのが本音です。できれば開廷日も増やして欲しいものです(個人的には金曜日はプライベートの用事の入ることが多いので、開廷日を金曜日以外にして欲しいと思っています)。
今年に入り新たな動きがありました。次年度から柏原支部(地裁と家裁)への裁判官の出張回数が、現在の週2.5回(木金と月2回の水)から週3回に増えることになったのです。開廷日等の詳細は検討中のようですが、いずれにせよ柏原支部が以前よりは利用しやすくなるのは間違いありません。
最後に柏原支部管内の弁護士(丹波市と篠山市に事務所がある弁護士)の実情についても簡単に説明します。現時点では、丹波市と篠山市にそれぞれ2つずつの法律事務所(計4事務所)があります。複数の弁護士が所属している法律事務所もあるため、弁護士の数は7名です。近隣の福知山市には9名、三田市は6名の弁護士がいます。弁護士の数が急増したため、昨年には丹波市と三田市にあった法律事務所が撤退しております。
もっとも、柏原支部に事務所を構える弁護士からみると、大阪や神戸等の遠方の弁護士に依頼される方が少なくないのが気になります。弁護士によっては遠方の支部まで出向くことを嫌って電話会議システムの利用を執拗に求められるために、円滑な調停の進行が妨げられたこともあります。地元のみなさまが地元の法律事務所を気楽に利用できるように、柏原支部の弁護士がもっと努力しないといけません。
地元の法律事務所を利用すれば、弁護士の出張費もかかりませんし、尋ねたいことがあれば弁護士に会うことも容易です。地域の目が気になるのもわかりますが、弁護士には守秘義務があり、外部に相談内容を漏らすことはありません。
丹波市、篠山市の法律事務所をご利用いただければ幸いです。
(丹波市 弁護士 馬場民生)