「少年事件は、戦後というスパンで見る限り、減少を続けており、ことに凶悪事件については顕著に減少している。また、近時10数年のスパンで見ても減少している。」

千葉家庭裁判所の加藤学判事が家庭の法と裁判2016年10月号で少年事件数の経年変化を説得力のある手法で分析されています。少年人口あたりの割合でみても少年事件は急速に減少しています(平成26年は平成16年の半分以下の割合)。統計を冷静に分析すれば少年事件の増加や凶悪化などという意見に根拠がないことは明白です。

それではなぜ少年事件が注目されるのか。

少年事件が減少したがためにかえって重大事件が目立つことはあるでしょう。それだけでしょうか。家庭の法と裁判2016年10月号では日本経済新聞の元論説委員安岡崇志が次のように述べてメディアの在り方を痛烈に批判しています。

「「心の闇に迫る」(中略)などと書いても、管見の限りでは、取材によって「闇」を晴らし、潜んでいたものを明るみに出したためしがない」

「「心の闇」なる言葉で語られる主要な対象である少年事件をとりまく状況は、何年も前から厳罰化と逸脱者の切り捨ての方向に進んでいるではないか。」

少年事件に限らず、なにが事実かを知らなければなりません。一人の人間が知り得る範囲には限界があります。己の無知を忘れ、事実の探求を怠ったとき、人は独善と排斥に向かうのです。

(丹波市 弁護士 馬場民生)