先日、興味深い標識を見つけました(写真)。標識には次のように書いてありました。
「この歩道は、ロボット実験区間です。いつも実験にご協力いただきありがとうございます。ときどきロボットが通ることがありますのでご注意ください。」
場所は茨城県つくば市の遊歩道。研究学園都市と呼ばれるだけあって、つくば市には多くの研究機関が集まっています。研究者が一般の遊歩道を使ってロボットを走らせているのでしょうね。
つくばという特殊事情があるとはいえ、「ときどき」ロボットが一般道を通る時代がやってきたことに感慨を覚えました。ロボットの存在が特別なイベントではなく、日常生活の中に位置付けられる時代になったことを実感したからです。
法律を扱う弁護士としては「ご注意ください。」の記載が気になりました。ロボットやロボット製造者(あるいは操作している人)ではなく、遊歩道の通行人に対して注意を促す内容となっています。本来であればロボットの方が通行人に注意すべきでしょう。通行人が不注意でロボットに接触してロボットを壊した場合、損害賠償を支払う義務を負うのはまわりをよく見ていなかった通行人なのでしょうか。
もちろん標識は一般的な注意書きであって、法的責任の所在を示すものではありません。おそらく落石注意の標識と同じ位置づけなのでしょう。ただ、ロボットに責任を負わせられないとすれば、ロボットを避けなかった人間に責任を負わせる可能性もゼロではないと、標識を見ながら私は考えたのです。ロボットをめぐる法的議論の行方に私は興味津々です。
(丹波市 弁護士 馬場民生)